チャーハン(一)2005/06/12

 ごはんは、あらかじめ箸などでほぐしておく。旅順から届いた敏夫の手紙には、ただ、それだけの言葉があった。
 和子の小さい手の中で、赤茶けた薄い一枚の便箋が、幾度も裏になったり、表になったりしたものの、それ以上のことはどこにも、なにも書かれていなかった。
 いやだわ、せっかく、と物足りない気持ちが口をついて出かけたが、以前と変わらぬ夫の無邪気な心に久々にふれた気もし、どこか安堵するような心もあった。
 庭に出たいのだろうか、よちよちと縁側あたりまで這い来た娘を抱き上げると、ほんとうに、困ったお父たんね、と、とりたて話しかけるふうでもなく、ぼんやりと暮れかけてきた西の空を見やった。